たんぽぽ荘,大学生,大学生活,新入生,先輩,同級生
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不定期連載小説

「たんぽぽ荘」



-1.子供の頃-

人に言わせれば、僕は人が良くて損ばかりしているらしい。
子供の頃こんな事があった。
友達のうちに何人かで遊びに行った時だ。 それぞれお菓子を持ち寄ると言うので僕はポテトチップスを1袋持って行った。
 行ってみると他の友達はお菓子を何袋も持って来ていた。
遊んでいるうちに庭の桃の実を食べさせてくれると言うので喜んでいたら、これがまた数が足りない。
 遊びに行った家の子が気の毒がってまだ青い実をくれた。
喜んでがりがり食べたが今にして思えば、怒って帰っても良かったような事じゃないかと思う。
 次の日学校に行ったらポテチ1個しか持ってこないせこい奴という噂が流されていた。
反面僕は頑固な所もある。
 学校の遠足で駅に向かった時の事である。
なんと500円が道路に落ちているではないか。
すかさず僕はそれを拾った。
そしてほくほくして遠足に行ったのだが、よせばいいのにそれを友達に自慢した。
「お前それはあいつのだぞ」
いきなり友達の言った言葉がそれだった。 何でも駅に行くときに小遣いの500円を落とした子がいたらしい。
 しかしいきなり言われたのと、その後しつこく泥棒扱いされたので僕は証拠がないと言い張って意地でも返さなかった。
 これもしばらくは学校で噂にされた。
 落とした本人が来れば返しただろうが、その後先生からも当人からも話がなかった。
 大きな問題にはならなかったのだろう。
 噂にした彼らとは中学まで一緒だったがその後会っていない。

-2.タンポポ荘へ-

 大学に行かせて貰って郷里を出たのは80年代前半。
 学校の指定寮に入った。
寮の周りは田んぼばかりで近くに小さな本屋があった。
 駅を出て地図を頼りに歩いていくと2階建てのL字形をしたアパートが見えてくる。
寮の屋根はオレンジ。緑の田んぼの中で屋根の色が映える。
 寮の前には大きな家。大家さんの家だ。
 何だか寮の古さと新築の家とのアンバランスさが印象的。
まあ、その時はそんなことはどうでも良かったが。
 とにかく故郷を離れて初めて暮らすのだ。
 自分だけの部屋を持つのも初めて。
 しかしそんなことよりも、先輩のしごきを想像し、ただ不安しかなかった。
 当時はスポ根ものの影響か先輩がやたら怖いという印象があったのだ。
 寮の敷地に入って最初に会ったのが、浅本母子。入り口付近に立っていた。僕と同じ新入生のようだ。
 挨拶したけど返事をしたのはお母さんだけで息子はこっちを見ていただけだった。
 関西弁だった。
 「大阪だな」僕は思った。 
 関西弁の親子の前を抜けてそのまま大家さんの家に向かう。
 大家さんは面倒見の良さそうなおばさんだった。
 歳は60代半ばだろうか。にこにこした血色のいいおばさんだった。
 自営業の息子さん夫婦とお孫さんが一緒に住んでいる。
 息子さんは仕事が忙しいようで以後滅多に姿を見なかった。
 この寮は朝と夕食が付いているのだが、まかないは奥さんがしてくれた。
 寮のしきたりで息子さんはお兄さん、奥さんはお姉さんと呼んでいた。
 「ようきたね。布団が届いてるよ。」
機嫌良くおばさんが迎えてくれ、部屋の鍵を渡してくれる。
「お世話になります」
大きな構えの入り口から見ると奥の部屋に祭壇のようなものが見えた。
「ああ、そうだったな」僕は思いだした。
 下見に来たとき両親と一緒に通された部屋があの部屋だ。
 おばさんは何か巫女さんみたいなことをしているとかいってたな。相談に来る人も多いようだ。
そんな関係で面倒見がいいのかな。
 僕はそんな事を考えながら大家さんの家の玄関を出た。
玄関を表として大家さんの家の裏側に回ると寮の入り口がある。
 寮はL字型になっていて、縦の部分が旧棟、横の部分が新棟で、建て増した部分になっていた。
 僕の部屋は旧棟だ。下見はしていたのでそのまま部屋に向かった。
 旧棟の入り口左側手前にはお風呂、右には二階への階段がある。
 そのまま奥に進むと左にはトイレがあった。 更に突き当たって右を向くと右手に四畳半の部屋が2つ、このうちの奥の方が僕の部屋だ。突き当たりに六畳の部屋が1つある。
反対に向くと左手のトイレ、その次に四畳半の部屋が2つあり突き当たりにも六畳の部屋。
 通路の床はコンクリート張りで、部屋と反対の壁にはサッシ窓があり、裏庭が見える。
夜この裏庭を除くと真っ暗でとても怖かった。
 部屋にはいると土間の左に小さな流しがあり、その横が押入になっていた。
昔の典型的な四畳半の間取りだ。
その中に布団がぽつんと置かれていた。
 とりあえずする事もないので買ってきた菓子パンを食べて布団袋にもたれかかっていると、何だかとんでもなく遠い所にまで来たような気分になって涙が出てきた。
電気も付けずにじっとしていると、何だか外に気配がしてきた。
明日が入学式なのでみんなもやってきたのだろう。
部屋の中は薄暗い。もう夕方だ。天井には前の住人がそのままにしておいてくれた蛍光灯がほこりをかぶっている。
 サッシ窓にはすりガラス。カーテンもない。
 外はさっき浅本親子と遭った駐車場だ。
 四畳半にあるのは自分と布団袋に入った布団と自分だけ。
じっとしていると何だか落ち込んできた。 トイレに行きたくなったので起きあがって通路に出る。
 トイレを済ませて通路に出ると、リュックを背負った色の浅黒い男が立っていた。
 今着いた所なのだろう。手には荷物を持っている。
 「そこの部屋?」
おもむろに男が言った。
 「そう」
 「高知やろう。僕もやき」
「...」
何だか突然のことで僕は反応が出来なかった。
田辺君との出会いはこんな感じだ。
 部屋に戻ってする事もなくぼーっとしていると複数の足音がする。
立ち止まって向こうの部屋の戸をノックする音。続いて戸を開ける音。何か話して戸が閉まる。その繰り返しが近寄ってくる。
 やがて隣の部屋。戸が開く。
 「ああ、誰かいたんだ..」
一人つぶやく。
 隣の戸が閉まり、僕の部屋の戸がノックされる。
 「はい」
戸を開けるとがっしりした体格の男が立っていた。背はそう高くない。
 後ろにはやはり体格のいい男。
 二人ともスポーツ刈りだ。
 「こんばんは。二年の藤多です」
 「紀村です。よろしく」
「こんばんは。」
先輩だ。ちょっと焦ったが二人とも目が優しそうだったので少し安心した。
しかし待てよ。二年と言うことはまだ三年と四年がいるのでは?
再び不安になる。
 「今晩7時に新入生との顔合わせをするから、新館の二階18号室に来てください」
「わかりました。よろしくお願いします」
返事はしたものの何だか怖い。
時間になった。
 あちこちで戸の開く音がし、通路が騒がしくなる。
 たぶん先輩だろう「時間だぞ」と言う声もする。
 僕も通路に出た。
 隣の6畳間のドアが開き昼間外で会った浅本が出て来た。
 反対側の部屋からはパンチパーマで陽気な男。「初めまして井植で〜す」
 彼のおかげで何となく気分がほぐれた。
 僕たちは新館に向かった。
(三に続く)

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