入学式,ミーティング,大学生,大学生活,新入生,先輩,同級生
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(「たんぽぽ荘」三、四へ)
不定期連載小説

「たんぽぽ荘」



-5.初登校-

この寮の伝統として入学式には新入生全員が歩いて学校に行くことになっていた。
四年生の蔭山さんが当時はやや下火になっていたロードマンで先導してくれた。
ロードマンというのは一世を風靡したスポーツタイプの自転車で、水牛の角のようなドロップハンドルが精悍ですてきだった。
後にこのロードマンは僕が譲り受ける事になる。  
蔭山さんは陸上部でジャージ姿。  
以来蔭山さんが卒業するまでの1年間、僕は彼のこの姿以外は見ていない。
「・・・」
「・・・」
互いに話はしない。
学校までは歩いて30分かかる。  
明るく饒舌な井植君以外はとりわけ話題もなく、この間僕は浅本と少し世間話をしただけだった。 
大学のキャンパスは桜が満開だった。  
受付で入学金を払い、案内された体育館に向かう。  
入学式が始まるが、内容は緊張であまり覚えていない。  
入学式が終わると教室に向かう。  
僕の学科はあまり人気のない工業化学科なので人数は少ない。  
教室に行くと40人ほどが集まっていた。  
この中の2人が入学直後に来なくなり、5月の連休明けには更に数人がやめ、その後も中退者が出て、4年後の卒業時には29人になる。  
知り合いもいないので黙っていると隣の男が話しかけてきた。
「どこからですか?」
「高知です。」  
少し太り気味の彼は加奈澤くん。  
「俺はよー。茨城だよ。」
くったくがない。  
茨城は水戸黄門しか知らないが、加奈澤君とはこの後の4年間、トラブルを起こしたり、喧嘩しながらすごすお友達になる。
時間になると学年主任の手村教授と助手の先生がやってきた。  
「皆さん入学おめでとうございます。」
まじめそうな助手の先生は夜須田先生。  
この学部の出身で、そのまま助手として残ったらしい。  
見たところまだ若く、30にもなっていないだろう。
僕たちのお兄さん的存在となる。
それぞれの自己紹介が始まると、主に四国と関西から集まっていることが分かった。  
関東からは数名。それぞれになまりがあっておもしろい。
この後授業の日程表などが配られ、説明がなされた。

−6.漫研−

続いて各教室の案内。
建物は少々古く、実験室は酢酸など薬品の臭いがきつかった。  
案内されている間に加奈澤君が時々話しかけてきてくれる。
おかげで寂しくなかった。  
ミーティング終了後、教科書と実験用の白衣を買いに行った。  
説明では3日の間にということだったが、早くすませたかった僕は加奈澤君と説明された教室に向かう。
案の定、教室は新入生でごった返していた。 教科書は売店横の教室で提供されていて、学科ごとに列ができている。  
ひと揃いで3万ほどかかった。  
大学とはお金のかかるところだ。  
一抱えの荷物を持ち、キャンパスへ。
そこでは露天商よろしく先輩方がクラブの勧誘を始めていた。
威勢のいい運動部の前をすり抜けて漫研を探す。  
「いた」
漫研のポスターを貼り付けたテーブルに数人の先輩と共に赤峯さんの姿が見えた。
「こんにちは。入部しに来ました。」
「おお、来たか。」
これで僕もはれてあこがれの漫研に入ることができた。
同人誌出して、コミケに行って、プロデビューして...  
と、なんだか夢はどんどん膨らんでいった。
(七に続く)

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