ゆうとぴあんず,小説,SF,作品,デザイナー,集まり
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不定期連載小説

「ゆうとぴあんず」



−1.桜井−
 
デザイナーの持田に桜井が電話してきたのは帰宅の電車の中にいた時のことだ。
「久しぶりだな。最近どうしてるんだ」
 「最近は仕事も暇だな。今は帰りの電車の中だ」
持田と桜井は高校時代の親友で共に陸上部でならした仲だ。
 最後に会ったのは5年前で、社会人になってすぐの頃。その後は何となく疎遠になっている。
「どうだ?今度会わないか」
「いいな。なんならこれからどうだ」
持田は独身でこれから特にすることもない。
 桜井の事情は分からないがとりあえず聞いてみた。
「いいぞ」
「じゃあ、M市の駅で」
「M市ならオーケーだ。七時でいいか」
腕時計を見ると六時を指している。
少し時間があるがそれでいいだろう。
「M駅に七時だな。オーケー」
持田は笑みを浮かべて答える。
 桜井が今どこにいるかも聞かずに話を進めた事が自分でもおかしかった。
M市はあまり大きくない街で駅も閑散としている。
六時三十分に到着した持田はゆっくりと改札を出た。
「あいつ、まだあれやってるんだろうか・・」
桜井には一つ気になる事があった。
高校二年の夏休み頃から時々ふっと姿を見せなくなる事があった。
 聞くとどこかで何かの集まりに行っているのだという。
 はっきりしないので問いつめると、来れば分かると言って誘われた。
 持田もそれほど気にもなっていなかったので誘いは断って後は気にもしなかった。
 大したものでもなかったのだろう。
 桜井もしつこくはしなかったので印象も薄くすっかり忘れていた。

 2に続く

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